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バム商ブログ

2025/09/08 15:35




文:Chris Pew(TREW デザイナー)

ジル・シエロ──正直に言うと、自分が一緒に滑れるなんて想像すらしなかった人物です。彼のことをどうやって知ればいいのかも分からない。
「スイス バックカントリースキー ガイド」でググっても出てこないし、ヴェルビエのホテルでベルボーイに「いいガイドいない?」と聞いて紹介されるような人でもない。

ジルは自分自身を宣伝しません。アフタースキーのパーティでチラシを配っているわけでもない。
世界中を旅して最高の山体験を探し求めるような人たちと偶然知り合って、その中の誰かに「スイスアルプスで最高の滑りを案内してくれる人は?」と尋ねたら、やっと名前が出てくるかもしれない。
そういう人です。知ってる人だけが知っている。



だから、彼をオレゴンに招いて一緒に滑ることになったとき、彼から「楽しみにしてる」と言われた瞬間の心境はこうでした。
「やばい…この男をどこに連れて行けばいいんだ?」

でも話を戻すと、どうやってこの話が始まったのか?
TREWがこの“超一流”スイスガイドとマルチイヤーのデザインプロジェクトを始め、1週間オレゴンに呼んで撮影とライディングを共にすることになったのか?
そこには、よく一緒に仕事をしている仲間であり、K2でジルのチームメイトでもある Marty Schaffer(Capow Guiding) の存在がありました。

ジルとマーティは、K2のエンジニアと共にバックカントリースキーの開発をしていて、Zoomで頻繁に打ち合わせをしていました。その中でアウターウェアの話になり、ジルが「もっとウェアデザインに深く関わりたい」と語ったのです。マーティは彼を僕に紹介してくれました。

2020年春、初めてZoomで話したときに、ジルは今回リリースする超軽量シェルの基本デザインをすでに示していました。それが後に Le Skieur Anorak となります。

ジルのビジョン

彼のアイデアは「超軽量でミニマル、でもフリーライドスタイルを持つツーリングシェル」。
正直そのときは「アノラックってどうなんだろう」と思ったけど、ジルが持つ膨大な山での経験から生まれる鋭い視点、そしてまだ世の中に存在しないものを明確に頭に描いていることを感じました。
僕らはTREWの製品をいくつか送ってブランドの感覚を掴んでもらい、コラボが始まりました。

数え切れないメール、スケッチ、試作品を経て、いよいよジルをオレゴンに呼び寄せる準備が整いました。
…でも正直、「この超人を7日間どうやってもてなすんだ?」って感じでした。

ジルはアルプスで初滑降を残し、アルバニアでヘリスキーをし、家の裏庭みたいにスイスのパウダーを滑ってきた人物。そんな彼を迎えて僕が案内できるのはマウント・フッド…。正直、気が引けました。

でもアイデアが浮かんだんです。
「彼の到着は夕方6時。スキーボウルは夜10時までオープンしてる。昼間はアルプスに勝てないけど、ナイターならどうだ?」

ジルが空港に着いたのは夜7時過ぎ。僕らはすでにスキーパンツをはいて待っていました。挨拶を交わすと、彼はパンツ姿に気づいてこう言いました。
「え、今から滑るの?」
「ライトがついてるし雪もいい。行く?」

彼の顔が一瞬で輝きました。さすが“Gilles, The Skier”。
途中でガソリンスタンドに寄って、彼の定番スナック=コーラとチョコをゲット。いざゲレンデへ。

スキーボウルは吹雪。ライトに照らされた斜面で、ジルはツーリングブーツとピンバインディング、試作K2スキーで、 tracked パウダーとモーグルを力強く切り裂いていきました。その笑顔は忘れられません。


後日、スノコルミー峠で素晴らしい雪を見つけて本格ツアーもしましたが、あの初日のナイターがすべてのトーンを決めました。
「スキーはどこでやっても最高」。アルプスの山でも、マウントフッドのナイターでも。


スイスから来た超人ガイドと僕らの共通項は“スキー”だけ。でもそれだけで信頼とリスペクトが生まれ、この素晴らしいプロダクトコラボにつながったんです。

Le Skieur アノラック ──僕にとって最高のツーリングシェルになりました。



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